2017年03月28日

パルケス国の危機 (01)

 

俺とメリアは、朝早くに城を出発した。
国境のインパス山頂にあるケルン洞窟に、夕方限定で仙人がお籠もりになる
という噂を聞きつけたからである。


方位磁石も、水筒や食糧ももちろん持っている。
高レベル魔法を使えれば、こんなものなど必要ないのに。
背中にびっとりと麻のシャツを貼り付けた俺は、山道で転げそうになって
いるメリアに手をさしのべて、なんとか道を進んでいた。

このインパス山は、初心者でも登れるくらいの低山だが、石や岩がごろごろ
している山道では、ちょっとした油断が命取りになる。足をけがして降りられ
なくなったら、もはやこの国の望みはない。


木々の青さが、太陽の下で光り輝いている。小鳥がさえずっている。小川が
見えてきた。サンダルが濡れてしまうが、かまってはいられない。じゃばじゃ
ばと、音を立てて川を渡る。方向は、間違っていないはずだ。洞窟は北のほう
にあり、そこまで行くのに三人の関所の妖怪と対決しなければならない。

領主の長男だというのに、俺の使える魔法は、スティックリーとリカバリー
とライトショックだ。こんなしょぼい魔法じゃ、あいつに勝てっこない。仙人
さまに、なんとかしてもらわねば。


ちなみにメリアは、まったく魔法が使えない。領主の長女として恥ずかし
い、とメリアは隠れて泣いていたことがあった。
だからこそ。
大魔法使いアーヴィングに城を任せて、ここまでやってきたのだ!
「わたしたちの願い、聞いてくれるかな」
メリアは、不安そうに顔を寄せた。


「仙人は、大事なものと引き替えに、ひとつだけ願いをかなえてくれるって言
うからな。だいじょうぶ、俺たちだって、身を清めて聖なる食事を取ってきた
んだから」
俺が答えると、妹のメリアはかすかにうなずいた。

しばらく歩いて行くと、山の関所が見えてきた。ここを越えなければ仙人の
いる洞窟までは行けない。逆に言えば第一関門だ。俺たちは、しっかりと手を
つなぎ合い、関所の妖怪に対峙した。
門構えは、朱塗りの柱にコオロギがとまっていて、どこか別世界への入口の
ようにも見えた。
右側に、何者かの影が、槍を持って立っている。

posted by アスリア at 09:15| Comment(0) | 創作