2017年12月23日

魔法世界のリフジーズ 02 変化03

「わたしも一緒に行くわよ」
香澄は、厚かましい口調でしゃなりと言った。

古里は、ゴム張りの車におれを乗せると、
「サンダートールは貴重ですからね」
と言って、ひたすら郊外へと走り続ける。枯れた葉が落ちた街路樹と、いまだ暗い空をながめながら、おれは先行きを考えて暗くなった。おれには頼れる親戚などいない。香澄はアテにできるわけがない。内面にみょうなことをささやく狂気を抱えて、おれはどうなってしまうのか。

着いたところは、見たところ大学病院のようだった。もちろんそうだろう。おそらく精神科へ連れて行かれるに違いない。わたしもついていくといきり立つ香澄をくっつけて、古里は中へ入っていく。
そのまま事務室みたいなところへ連れて行かれ、ゴム製の魔法人形に簡単な質問をされてから、おれは医師に面接した。
「あなたには、特別な処置がなされます」
医師はそう言うと、黒いめがねをずりあげた。
「観察部屋で様子を見ながら、投薬を受けてください」
「おいおい、おれは動物園の珍獣か?」
おれは文句をいうと、辺りを見回した。出入口は、しっかりと警備員が立っている。逃げる隙はなさそうだ。
「安心なさい、研究結果は世界平和のために使われますから」
医師は、無表情な目で告げる。世界平和について、なにか言いたいことがあるようだが、がまんしているという印象である。
「あなたも、帯電していては、精密機械(セマミラー)が使えないでしょう? それに食べ物を冷やす暗零庫や瞬間料理魔導機などが使えないとなったら、料理ができない」
「外食しますよ」
「店の精密機械(セマミラー)が破壊されますよ。サンダートールは、雷の神の使いでもあります。この世界の精密機械のすべてを壊しかねない」
「―――サンダートールは、なぜそんなことをするんだ? おれはそんなつもりはないぞ」
「雷の神は、この世界の精密機械を敵視していますからね。あなたは生きている爆弾です。保護する必要があります」
「保護してもらう必要なんかない」
なにやら、陰険な目で見つめてくる目つきが気に入らない。おれは反発した。
「そもそも、サンダートールになりたくてなったわけじゃない」
「だいじょうぶですってば。なんとか雷の神をなだめて、天に帰ってもらいますから」
アテになるのか?
「宮崎さん、ほかに方法はありませんよ」
医師は冷淡な口調だった。ひとを実験材料とみている目つき。
「あの、宮崎さんと話したいんですけど」
香澄がそう言う。医師はそこを離れた。
「―――いい話じゃないの。なんでぐずぐず言ってるの」
香澄はすっかり信じているようだ。
「ひとを珍獣扱いするのが気にくわねーんだよ。それに、あいつらの言うことがすべて信じられるとも思えない」
「なんでそう思うわけ?」
「もし、信じられるなら、出入口にあんな警備員を置くものか」
香澄は、そちらのほうをチラ見した。
「そりゃまあ、一理あるけど」
「おれのなかに雷神がいるなんて荒唐無稽な話、信じられるもんか」
おれは吐き捨てた。
「でも、狐憑きはわりとみかけるわよ」
香澄はじろじろおれを見つめた。
「どちらかというとあなた、雷の神より狐のほうが似合ってるわ」
「うるさい」
  おれは身を縮めた。「ともかく、ここを脱出する。サンダートールがなんなのか、ここにいてわかるとも思えないし、なぜ雷の神がおれに取り憑いたのかもわかるはずがない」
「どこかわかるアテでもあるの?」
香澄はキラッと目を光らせた。冒険するのが好きなタイプらしい。
「ひとり、心当たりがある」

posted by アスリア at 20:08| Comment(0) | 創作エッセイファンタジー