2018年07月10日

天国の郵送便

天国の郵送便

ここあは、パパが大好きでした。でもパパは病気で死んでしまったのです。今は二十三世紀、ママは、インターネットで、あの世へ行った人の生活をDVDで送ってくれる店を見つけました。ここあは、パパがあの世からどんなお話をしてくれるのか、大変たのしみにして待っていました。
「ねえママ、天国ってどんなところなのかな。パパはそこで、どんな暮らしをしてるのかな」
ママは、ニコニコ笑いながら、
「きっと幸せに過ごしてるわよ。大好きなゲームをしてるかもね」
注文を思い出しながら、ママはここあにかがみこんで言いました。
「DVDはほんとうに高かったから、送料が安くすむこだま便にしたのよ。でも、こだま便はひかり便より、配達されるまでに時間がかかるんですって」
ここあは、気にしませんでした。パパの暮らしぶりがわかるなら、それでもいいとおもったからです。
「ママ、わたしのお誕生日までには、DVDが来るんでしょう?」
ここあは、ママの首に抱きつきました。
ママは、洗濯ものをロボットに片付けさせながら、
「きっとお誕生日までには来るわよ」
と言って微笑みました。
ところが、一日たち、二日たち、一週間たってもこだま便は配達されません。店に問い合わせても、
「ただいま注文が殺到しています、もうしばらくお待ちください」
という返事がかえってくるばかりです。
ここあはとても心配になってきました。こだま便は、どうなってしまったのでしょうか。道の途中で、事故にあってしまったのでしょうか。もしかして、パパはほんとうは地獄に落ちてしまって、わたしにはみせられないからママが注文を取り消しちゃったのかも知れない。
いろいろな想像が頭の中を駆けめぐります。
ママの使っているスマホもパソコンも、ここあには使えないので、ここあはおもちゃのスマホを使って、スマホごっこをして遊ぶことにしました。
「もしもし、天国の郵送屋さん。パパからのDVDは、どうなりましたか?」
「ここあは悪い子だから、DVDは送られてきません」
そんな会話を聞いていたママは、おもちゃのスマホを取り上げてしまいました。
ここあは涙を浮かべて、ママを見上げました。
「天国からのDVDなんて、うそっこだったのかな。ほんとうはそんなのなくて、ドラマとかでごまかしてるのかな」
ママはすっかり弱ってしまいました。
「ママも、わからないのよ。ただ、ママのお友だちは、みんな、ほんものだって言ってるから、信用しちゃったの。いまは二十三世紀でしょう? あの世にだって通信できるんだよって言われたの」
「ママってお人好しなんだね」
「こらっ!」

それから数ヶ月、なにごとも起きませんでした。ママはすっかりだまされたのだとあきらめていましたが、ここあは郵便ポストを見に行って、店からDVDが配達されているのではとのぞき込むのです。
そんなクリスマスの日、ここあはマンションの自分の部屋で、勉強していました。お友だちといっしょにクリスマスパーティーをするまえに、ちゃんと勉強をしなさい、とママが言ったからです。すると、窓がコツコツ叩かれました。見ると、窓の外に、トナカイに引かせたそりにのった、赤い服のおじいさんが、ほっほっほと笑っているではありませんか!
驚いて窓から身をはなすと、おじいさんは、
「すまんすまん、道草をしてしまった。こだま便だけに、ひかりより遅いんだよ」
と言って、DVDとリボンの付いた箱を差し出しました。
「この箱は、いい子だったここあへの、パパからのプレゼントだよ」
ここあは、用心深く窓を開け、二つのプレゼントを受け取りました。
「さらばじゃ!」
おじいさんは、空を飛んで行ってしまいました。ここあはぽかんと見送りました。
箱を開けてみると、キラキラ光る虹のようなカードに、きぼうと書かれた猫が入っていました。
ここあは、そのきぼうを取り出して、DVDをみるために、ママのところへ駆けだしていきました。

posted by アスリア at 09:20| Comment(0) | 創作
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