2018年10月08日

お月さまときつね シリーズ3編

   
    お月さまときつね
   
    森の中にきつねがいました。夜になるときつねは、森のちいさな池に行って、お月さまをながめるのでした。この日も金色のまんまるお月さまが、きらきらと森を照らしていました。「こんばんは、お月さま」
きつねは、池のお月さまに話しかけました。
「きつねさん、いつも見守ってくれて、ありがとう」
お月さまも、ごあいさつしました。きつねはお月さまの元気そうな顔を見て、
「ぼくもそっちに行きたいな」
と言いました。
「ちゃんと来れるよ。簡単だよ」
お月さまは、ニコニコわらっています。
「ええっ。どうするの?」
きつねが言うと、お月さまは、
「空へのきっぷを頭にのせて、池にとびこめばいいんだよ」
「空へのきっぷ?」
きつねは、ふしぎそうに聞き返します。お月さまは、
「木の葉だよ。おじいさんからもらったでしょう?」
そうです。人間に変身できる木の葉を、きつねは持っていたのでした。どうやらその木の葉は、変身できるだけではないようです。
きつねは家にもどって木の葉をとりだし、頭につけました。そして池のほとりへと歩みよりました。すると月の光が射し込んできて、木の葉が青く光りました。
「えいやっ!」
きつねは、思い切って池の中に飛び込みました。とたん、池が波打ち、大きな穴が開いて、そのままきつねを飲み込んだかと思うと、きつねは月の世界にたどりついていました。
月の世界はしずかで、ひらひらと美しい蝶や、見たこともない花が咲いていました。かぐわしい匂いがあたりいちめんただよっています。
  ところがそこへ、いじわるな黒い雲が、月をいじめにやってきたのです。びゅうびゅう冷たい風が吹き、月の花びらは舞い散って、蝶はどこかへ消えてしまいました。きつねは雲にむかって、
「けーん!」
ととびかかっていきました。
「お月さまをいじめるな!」
とドロドロした雲に爪を立てると、雲はぎゃあと言ってたいさんしてしまいました。
その拍子にきつねは、どっぼーん!
はるか下にある森の池へと、まっすぐ落ちていきました。
「きつねさん、だいじょうぶ?」
お月さまは、心配そうです。きつねは池からあがりました。からだはふしぎと濡れていませんでした。ふと、頭をなでてみました。
「あれっ。ない。空へのきっぷになる、あの木の葉がない」
「たいへん! どうしましょう!」
お月さまは、しばらくしてから決意しました。
「わかったわ、わたしのたったひとつの金メダルをプレゼントしましょう。これを使って、わたしの国にいらっしゃい」
お月さまは、そう言って高い空からメダルを池に落としました。
きつねは、胸を張ってそれを頭からさげ、
「どうもありがとう、お月さま」
と言いました。
    
      きつねとお月さま うさぎさんときつね

 
きつねがお月さまから、黒い雲をやっつけたお礼に、金メダルをもらったという話を聞きつけて、小さなうさぎさんがやってきました。
「これが、お月さまからのお礼だよ」
きつねがメダルを見せてあげると、
「いいなあ、ぼくもほしいなあ」
うさぎさんは、ひとしきりうらやましがりました。
「じゃあ、ちょっとだけ、かしてあげる」
きつねさんは、うさぎさんに金メダルをかしてあげました。
うさぎさんは、家にそのメダルをもっていって、おかあさんに見せました。
するとおかあさんは、「うさぎの家にも、昔から伝わっているおだんごの作り方があるのよ」
と言って、だんごの粉をねってお湯でゆでて、小さなだんごをいくつも作ってくれました。
うさぎさんはそのだんごを持ってきつねのところへ戻り、金メダルを返して言いました。
「これ、メダルをかしてくれたお礼」
「なんだ、そんなのいらないのに」
きつねは、すっかりおどろいたようでした。
「今度の満月にお月さまに会いに行くんだ。きみもいっしょに来いよ」
うさぎさんは、おだんごを持って満月にきつねと会う約束をして別れました。

つぎの満月の夜に、きつねさんが森の池で待っていると、うさぎさんがおだんごを持ってやってきました。
「そんなの、いらないのに」
きつねさんが言うと、うさぎさんはちょっぴり恥ずかしそうに、
「お月さまに会いに行くのに、なにも持って行かないのは失礼かなと思って」
「それもそうだな。ぼくもなにか、持って行ったほうがいいのかな」
「だいじょうぶですよ。あなたのぶんのおだんごも、用意しておきましたよ」
うさぎさんは、そっと三つばかり、きつねさんにおだんごを渡しました。
「ありがとう。メダルをしっかり持って」
きつねがメダルの先っぽをうさぎさんに渡します。ふたりはいっしょに、池の中に飛び込みました。
するとどうでしょう。
池がきらきら光り出して、大きな黒い穴になって、星空に吸い込まれるように二人は、しらないところに来ていました。
そこにはお月さまが待っていました。
「ようこそわたしの世界へ!」
きつねとうさぎさんがおだんごをさしだすと、お月さまはおいしそうにそれを食べてから、
「ごちそうも、食べますか?」
と言って、とってもきれいなお城に連れて行って、見たこともないごちそうを振る舞ってくれました。美しい蝶や鳥が舞い踊り、かぐわしい花の匂い。きつねもうさぎさんも、おなかいっぱいごちそうを食べて、しあわせな気持ちになりました。
「このメダルは、お返ししますね」
きつねは、月からもらったメダルを差し出しました。
「あ、要らないんだったら、ぼくがほしい」
うさぎさんが言うので、きつねはすこし笑って、
「月の世界にながくいたら、お母さんが心配するよ」
でも、うさぎさんは首を振って、
「いやだいやだ。帰りたくないよ」
と言うのです。
「仕方ないですね。メダルはあなたにさしあげましょう。そのかわり、おだんごを作ってくださいね」
お月さまがそう言いました。
きつねは、うさぎさんにメダルを渡し、森の池に向かって飛び込んで行きました。
お母さんは、息子がお月さまの世界でおだんごを作っていると知って驚き、悲しみましたが、きつねが毎日おみまいに行きましたので、そのうち元気になりました。
それからお月さまにおだんごをそなえるようになったのです。

きつねとお月さま お月さまのえんそく

秋が深まってきました。お月さまは、気分がうきうきしてきました。夜のピクニックに出かけるつもりだったからです。
「きつねさんも、誘ってみたらどうかな?」
と、月の世界のうさぎさんも言うので、いつものように森の池をのぞきこみました。
ところが、池がどこにもみあたりません。
森そのものも、どこかに行ってしまったのです。
「どうしたんだろう」
お月さまは心配になって、石のかげや川の岸辺を照らしました。すると、きつねがあなぐらから現れて、
「ああ、びっくりした。心配かけてごめんね」
と言うのでした。
「おうちは、どうなったの?」
お月さまが聞くと、きつねは、
「人間がまるごとやってきて、森を引っ越しさせてしまったの。でもだいじょうぶ。ぼくはこのあなぐらで、生きていけるから」
お月さまが、お弁当を持っているのに気づいたきつねは、
「あ、これからピクニックなの?」
と聞きました。
「きつねさんがたいへんなときに、ピクニックどころじゃないよね」
お月さまがしょんぼりすると、きつねは笑い飛ばして言いました。
「だいじょうぶだよ。ピクニックをするための、森バスがあるから」
お月さまは、少しふしぎそうになりました。
「森バスって?」
「動物たちを乗せて、山へと登ってくれるバスのことだよ。運転手はたぬきさんなんだ。お月さまも、いっしょに乗ったらどうかしら」
きつねの言葉に、お月さまは手をうって喜びました。
「わあ、バスに乗せてくれるの? たのしみだなあ!」
そうして、お月さまは森バスがやってくるのを見つめました。森バスは、月の光を窓に受けて、きらきら銀色に輝いています。
森バスというだけあって、窓のほかはぜんぶ木の絵が描いてありました。その森の絵と窓の絵が、ちょうど森の中の池のようにお月さまを映し出すのでした。
お月さまが、森バスの窓でお休みしていると、バスが出発して、山へと登っていきました。
「きつねさん、お弁当食べる?」
お月さまは、窓から話しかけました。森バスとお月さまは、つながっているのでした。
きつねは、困ったように、窓に映るお月さまを見ました。
「どうやって、取りに行きましょう」
「あ、ちょっと待ってね」
お月さまは、まるでお料理用のはしみたいな、ながーいはしを持ってきて、窓からお弁当の中身をきつねに差し出しました。
レンコンや、ゴボウや、サトイモの煮っ転がしが、ほっぺたが落ちそうなほど、おいしいのです。
「あーん」
口を開けるきつねに、お料理を運んであげるお月さま。
「お月さまって、料理上手なんだね」
きつねは、感心したように言いました。
「いえいえ、実は月のうさぎさんに作ってもらったんですよ」
お月さまは、すこし照れたように言いました。
バスががたんととまると、そこはもう山の上でした。森バスの窓から降りたお月さまは、山の上でお弁当をひろげて、きつねがやってくるのを待っています。
「森が引っ越したのは、たいへんでしたね」
お月さまが、きつねにそう言うと、
「でも、森バスが通るようになったから、べんりになったよ」
ときつねは答えました。
ふたりが弁当を食べ終わるころには、山のはしのほうがしらみかけて、夜が明けていくのでした。
「さようなら、きつねさん」
お月さまは、挨拶しました。
「また会いましょう」
きつねもそう言って、森バスに乗り込み、あなぐらへと帰って行きました。

posted by アスリア at 15:30| Comment(0) | 創作エッセイファンタジー
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: