2017年10月31日

魔法世界のリフジーズ 01 落雷 その1

   落雷(01)
   
    魔法世界のアイテム(セマミラー)を使いこなし、それを職業とするひとたちのことを、ここ魔法世界タジマレー国ではセマリストという。セマミラーはここでは遠隔地でのコミュニケーションには必須のアイテムで、それに付随してセマネットと呼ばれる空間からの情報もゲットできる。おれはこのアイテムに、十三年ほど関わっている。
    おれの名前は、宮崎 大輔。二十三歳のフリーターだ。
    テレビは楽しそうに、セマネットの動画を紹介している。おれも含めた若い子は、みなセマミラーを使いこなし、わからないことはセマネットに聞いている。何でも知ってるラプラスの魔、それがセマネットだが、セマミラーがなければそこに質問することはできないし、セマミラーで年のはじめの挨拶もできないし、お歳暮もお中元も贈れない。対戦ゲームもできないし、日記もつけられないし、写真の保存もむり。

繰り返しいうが、アイテムを使いこなすことが、この現代魔法世界では必須なのである。
ひとは道具を使うのではなく、使われていると作家や評論家からは皮肉を言われる事態であった。
なので、おれは、ボランティアでセマミラー難民(リフジーズ)たちを救うことにした。
数年後には、このアイテムの専門的な知識や考え方を、小学生のうちから身につけさせるつもりだと政府発表があった。学校に丸投げされた技術的なあれこれを、地域の人々がフォローするという案もあるそうだ。

地域の人々。おれもそのひとりだ。うまくすれば、学校の講師として潜り込み、カネを稼げるかもしれない。

その準備として、ボランティアをするのである。
でなければ、なにがかなしゅうて二十三歳で、年寄り相手にセマミラーのツボの押さえ方などを教えたりするものか。
セマミラー、魔法のアイテム。
セマネットにつないで、情報をとりだせるアイテム。
こいつが動物なのか無生物なのか、機械なのか生物なのか、発明したひとにもわかってないんじゃなかろうか。
もちろん、おれだってセマミラーをなにもかも知っていたわけではない。
いまだって、知らないことはたくさんある。
自力で学べることは、限られている。
ボランティアは、学びの場でもあった。

   不気味な、ウミウシみたいなぐにゅぐにゅした黒っぽい物体に手を突っ込んで、突起物であるツボを、表示されている文字に従って打っていく。そうすることで魔法が起動する。
「こんにちわ」
セマミラーが、かわいらしい声を立てる。
「わあ、できた、できた!」
  おれの担当生徒、東橋 知巳(ちなみに女だ)は、手をたたいて喜んだ。
おれは、内心、忸怩たるものがあった。タジマレーでのおれの地位は、決して高いものではない。技術はあっても、才能がないために就職口がない。へたに資格があるから、一般業では雇ってもらえない。仕事がきつすぎて体を壊したため、同じ仕事には就きたくない。
なのに、セマミラーから離れられないでいる。
自分の技術を仕事にできない自分が、腹ただしくなってきた。こんな場末の公民館の教室で、リフジーズ相手になんのカネにもならない仕事をしている。この年寄りだって、こころの中じゃ、若造にまなぶ自分が情けないと思っているのに違いない。
とはいえ、おれの手に入れたどんな知識も情報も、世の中にはセマミラーが必要だという認識を変えはしなかった。おれはそのためにここへ来たのだ。セマミラーのなし得る可能性を最大限に引き出すために。セマミラー内の情報の引き出し方、持ち歩き方、処理の仕方。
その認識が変わるということは、人生が変わると言うことだ。
おれに限って、そんな事態が起こるはずがないと思っていた。
ところが、そうじゃなかったのだ。
おれは雷に打たれた。

posted by アスリア at 21:55| Comment(0) | エッセイ

2017年10月26日

魔法世界のリブリーズ

魔法世界のリフジーズ

世の中は魔法ブーム。どこもかしこも魔法で溢れている。

外国人と翻訳魔法で話したり、自動的に料理ができちゃったり、ホムンクルスがファッション・アドバイザーだったりする。

だけど、そんな世の中についていけない人だっている。

魔法をつかうには、特定のアイテムとコツが必要なのだが、それがイマイチ呑み込めないひとたちのことを、魔法リフジーズと呼ぶ。

リフジーズ、つまり、難民。

魔法を使えない難民―――つまり落ちこぼれと、使いこなすエリートとが別れて、反目しあう事態となった。

  そんな時代をなげく声もあれど、世の中の趨勢は、変わることなく魔法中心である。

魔法を悪用する犯罪も増えた。

このあいだは、スカートの中身を透視撮りされたと、ニュースになった。

こっそりしまっておいたへそくりの、魔法を解除されて盗まれてしまった。

いじめっ子にしつこく魔法攻撃されて、証拠もなくて泣き寝入り。

そんな暗い世の中だったが、それでも魔法は人びとに不可欠なものになっていた。

学校で魔法を使うのはもちろん、食料品の保存や調理、流通における検品や発注、運送、店の決済、銀行でのお金のやりとり、株……。

およそ考えられるすべてのモノには、魔法が関わっていた。

当然、子どもだけでなく、大人や年寄りも、魔法を学ぼうと考えるようになっていった。
これは、そんな魔法時代のボランティア活動の一部始終である。

posted by アスリア at 20:28| Comment(0) | 創作エッセイファンタジー

2017年09月28日

コメントに一喜一憂

コメントに一喜一憂

  やた! コメントがついた!
長らくブログを続けていたが、生まれて初めてコメントがついた。
わたしは狂喜乱舞して、ぬいぐるみのジジを抱きしめ、部屋の中をダンスした。
スマホが部屋の足の上に転がって、がしゃりと音を立てて割れた。

わーっ!

すぐに返答を書かないと、読者は逃げてしまう。ブログを付けているのはわたしだけではないのだ。読者に愛想を尽かされたら、読んではくれなくなる。

わたしは、スマホを拾い上げて、すぐさまショップへ向かった。
ところが。
道は、混んでいるどころではなかった。
ちょうど、地域のゆるキャラ選出イベントがあって、その行列を見るための群衆が、わたしの行きつけのショップの前を、大挙して押し寄せている。
車はとろとろ走り、たびたび止まった。
ゆるキャラ演出のためなのか、パレードが出てきて、どんひゃらどんひゃら、ぷかぷかどんどん、騒がしいことこのうえない。わたしはイライラしながら、その行列を見送り、車を有料駐車場に駐めると、さっそくスマホをショップに出した。

「お気の毒です。手遅れでした」
まるで、末期ガン患者が臨終を迎えた医者のような口調で、店舗の人は言った。
スマホは、見るも無惨な姿になり果てて、起動すらできないようであった。
「中身、移動できないんですか」
ポケモンGOとか、Lineのデータとか、いろいろ入ってるんだけどなあ。
すがる思いで聞いてみても、
「ショップが違うので、なんとも」
とあいまいな返事。
そうしているうちにも、町はどんひゃらどんひゃら、ぴーひゃらら。
わたしはだんだん、イライラしてきた。
「じゃあ、どうすればいいんですか!」
「この際、スマホの乗り換えをなさっては? オトクな料金プランもありますし」

料金プランをいくら見わたしても、どれも必要不可欠なものばかりが並んでいる。
電話だってしたい。インターネットはもちろんだし、Lineも当然だ。
ちょっと壊れただけで、維持費8000円の出費は痛い。
無料だけど、なんでこんなに、機械がもろいのかなあ。
そりゃ、たしかにわたしはひとよりも筋肉はついていると思うけど。
  結局、売りつけられてしまったじゃんか。

なんてことを考えつつ、有料駐車場に戻ってみると、そこにたむろしているゆるキャラたち。
行列が終わったので、休憩に入ったらしい。ちょうど近くに設営所もあった。
わたしは、ゆるキャラたちの間を抜けるようにして歩いた。
すると、そのなかの一人の声が、耳に入った。

「すごく気の合うブロガーがいてさ。コメントを付けたんだけど、返答がないんだよ。どうしちゃったのかなぁ」
見ると、頭だけ着ぐるみをはずしたイケメンが、悩ましい表情で同僚に打ち明けている。
「どんなブロガーなんだ? 写真だしてるのか?」
「いや……。ただ、美しい詩をつくってる。あんな繊細な感覚を持つひとに、悪い人なんていないよ」
「そーかー?」
イケメンは、その美しい詩をくちずさんでてみせる。

ああ、そんなにも空がひろい。
闇が拓けていく。
月がきらめいて、銀の糸になる。

その内容を聞いて、わたしは背筋がゾクッときた。
  それは、わたしの書いた詩だった。
「コメントの返事が、かえってこないってことは、迷惑だったのかな」
イケメンは、ため息を吐いた。
わたしは、新しくなったスマホをポケットにつっこんで、イケメンに近づいた。
胸はどきどきしている。
生まれて初めて、評価してくれたひと。
自分の詩を、認めてくれたひと! それが目の前にいる!
恥ずかしい。
Web詩人として、このまま隠れていた方がいいのでは?
いいおとなが、あんなリリカルな詩を書くなんて、みっともなくないか?
理性は止めるが、感情は暴走した。
つかつか、詰め寄ると、イケメンに、殴りつけるように叫んだ。
「あの……。その詩は、わたしが書いたんです!」
「えっ」
イケメンは、わたしを振り返って、みるみる顔を引きつらせた。
「あ、そ、そうなんですか」
同僚が、くくくっと笑いをこらえている。

悪役レスラーがWeb詩人で、なにがわるい。

posted by アスリア at 08:49| Comment(0) | エッセイ